『ラストレースへの想い』泉野 隆斗

9月8日(木)〜11日(日)に全日本大学選手権大会が開催されます。熱いご声援を宜しくお願い致します。熱いご声援を宜しくお願い致します。4年生全員がレースへの想いを綴りましたので、紹介していきます。

今回の担当は、泉野 隆斗(政経4・早稲田実業=東京)です。是非、ご一読ください。

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「天上天下唯我独尊」

 社会人と学生の違いにおいて、一番わかりやすく且つ一番大きなものは、大人であるか否かである。大学部活動の引退という、大人と子供の間にある最後の境界線を跨ぐようなイベントが迫っているという事で、最期に子供っぽいことを言い残していきたいと思う。

 この4年間、色々と苦労が絶えなかった。早慶戦幹事校の主務、監督の交代、コロナ禍、同期マネの失踪(ちなみに私がいた4年間で中途退部したマネは9名もいる)、そして10年間共に頑張ってきた同部屋の休部(これは本当に呆れた)、挙げればキリがない。プレッシャーとストレスで、入部当初は情熱で真っ赤に燃え上がっていた私のハートは、今では風前の灯火と化してしまった。それでも火を絶やさなかったのは、先輩の熱い想いを後輩に届けなくてはならないという、駅伝ランナーのような使命感があったからだろう。投稿写真を見てギョッとした方もいるかと思うが、限界状態の私には2次元のアイドルくらいしか縋るものがなかったのだ。一歩間違えれば救いを求めて怪しい宗教に入信していた可能性もあるので、彼女は命の恩人といっても過言ではない。

話は逸れたが、この限界状態で私が正気を保っていられた理由がもう1つある。それは、「天上天下唯我独尊」という言葉である。仏陀が生まれた際の第一声で、この世で一番偉いのは私だという意味である。またギョッとされた方もいると思うので、なぜこの言葉に私が救われたかを説明させて頂きたい。この理不尽で残酷な世の中では、私のような優しくて公明正大な人間は、一滴のインクで濁ってしまう水のように、簡単に穢れてしまう。だから私は、自分の大切なもの(正義や心の健康など)を守るために、この言葉を座右の銘にして生きることにしたのである。自分が一番偉いと思っていれば、誰に何と言われようと傷つくことはない。また、理不尽な目に逢ったとしても、何も感じない。他人の言葉が響かなくなったというわけではなく、他人の言葉を、感情抜きでフィルタリングできるようになったのである。かくして、私の正気は保たれたのであった。

さて、目前で発生している事象を感情抜きに整理出来るようになったことは、人として1段階ステップアップしたといえる。人間としてのレヴェルをあげること(説明し難いが、単に技能や人徳を磨くことよりも、アナムネーシスに近い)は、人生におけるテーゼではなかろうか。私は4年間で大変な目に逢ってきたが、人間レヴェルが上がったことや人生の意味について考えさせられたことなど、他所では得られないような経験を積むことができたので、あの時の心労にも意味があったのだと今ではポジティブに捉えている。

 ただ、見返りを求めて入部したわけではないが4年間の苦労に対してのリターンが圧倒的に少なすぎる。だから漕手諸君、試合に勝って僕の4年間が無駄ではなかったことを証明してくれ。敗コロなんてされたら今度こそ鎮火してしまうから。

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