『ラストレースへの想い』遠矢 陸人
【ラストレースへの想い】
9月4日(水)~8日(日)に全日本大学ローイング選手権大会・オックスフォード盾レガッタが開催されます。熱いご声援をよろしくお願いいたします。4年生全員がレースへの想いを綴りましたので、紹介していきます。
今回の担当は、遠矢 陸人(スポ4・熊本学園大学付属=熊本)です。
是非、ご一読ください。
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先日友人にこんなことを聞かれた、「引退するのは寂しい?」ここ一年の練習のモチベーションが「同じ練習をあと一年やらなくていい」であった私は思いもよらぬ質問に答えが出なかった。しかし、引退ブログを書くにあたり約7年間のローイング人生を振り返り、こう思う。「なんか楽しかったくね?ちょっと寂しいかも」
大学でローイングを続けた理由は日本一を獲りたかったからだ。大学で同期になる男に負け、3年の大会はコロナで中止、悔しさを忘れられず大学でも競技継続を選択した。当時の僕にこうアドバイスをしたい、「大学ボートは朝6時起きが遅いと感じるくらい生活がおかしくなるぞ」と。
特に大学1年は高校時代の驕りをぶっとばすほどの挫折の連続だった。インカレクルーでは練習後1時間以上バック台をしては、「全然あかんわ」と大好きな先輩に冷たく言われ悔しさのあまり枕に顔をうずめ、発狂する毎日だった。今思うと諦めずに指導してくださった先輩方には頭が上がりません。牟田さん、武蔵さん、陸央さん、ありがとうございました。今ではこんなに笑顔でバック台が出来ます。
秋には腰椎分離症になり約1年間練習から離れる時期があった。他の部員がエルゴや乗艇のタイムを伸ばすことを素直に喜べない自分が嫌いになった。何もしていない自分がこの部活に必要なのかなという疎外感で仲間のはずの部員が自分のことを悪く思っているに違いないと思ってしまい辛かった。
たくさんの負けも経験した。3年生の対校での早慶戦大敗は大きな責任や重圧がのしかかり今までにないほどの悔しさがあった。0から大会を作り上げるマネージャーや大会を支えてくれるサポート陣の顔が思い浮かび、あれほど誰かの思いを背負って戦っていると感じるレースは早慶戦だけだ。早稲田の一員として戦えたことはとても誇らしく思う。
今までの文章はまるで楽しかった、よかったことを書いていない風だが、現在の私の記憶には「経験してよかったこと」として刻まれている。冬の凍てつく寒さの乗艇も、2週間に1回のシングル6000mTTもエルゴのセッションも。それは苦しみを乗り越えた先にある達成感や充実感を手にしたからだ。
最後に両親には心の底から感謝している。高校から親元を離れローイングに挑戦するという私の夢を笑顔で後押ししてくれてありがとう。腰を怪我した時、同部屋だった加藤君には冗談交じりにトレーナーになると言っていましたが半分本当でした。選手を辞めれば楽になれると思っていました。苦悩する中で両親に競技する姿を見せたいという気持ちが僕の原動力でした。本当にありがとう。
「高ければ高い壁の方が登った時気持ちいいもんな」と、ある歌手は歌う。これまで7年間日本一という壁に四苦八苦しながら登り続けてきた。その最後にはどんなものが待っているのだろうかとワクワクしている。私のローイング人生最後の登頂が今始まる。
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