OB紹介・笹尾典克さん

早稲田大学漕艇部の卒業生は世界を舞台に、あらゆる分野で活躍されています!そんなOBOGの方々から新入生・高校生に向けてメッセージをいただきました!!

初回の今回は、笹尾典克OB(H14年卒)です。


Q 卒業学部学科を教えてください

A 2002年に理工学部応用化学科(現、先進理工学部応用化学科)を卒業しました。その後、大学院に進学し2004年より今の会社で勤務しております。小学校の時に学んだ植物の光合成をきっかけに化学の魅力に目覚め、その時から化学の道に進むと決めていました。


Q どちらにお勤めでしょうか?

A 半導体の会社に勤務しております。


Q 勤め先ではどういうお仕事をされていますか?

A 半導体の性能を飛躍的に向上させるための研究開発に従事しています。大学・大学院で学んだ専門分野を土台に、世界に先駆けた成果を目指して日々実験と検証を重ねています。


困難にぶつかっても、漕艇部での経験が自信となる。


Q 漕艇部での経験は社会人になってから、どういう場面で活かされていますか?

A 職場で他人と筋力やスピードを競うことはないので、漕艇部で鍛練したフィットネスが直接役立つことは残念ながらありません。しかし、何か壁に当たって思い悩んで停滞してしまったとき、ふとボートのことが思い浮かび気持ちが高揚することがよくあります。そのことが問題を解決するダイレクトな解にはなりませんが、私にとって漕艇部での経験が自分をかたちづくるアイデンティティーの一つとなっていることは疑いの余地がなく、それが困難に立ち向かえる自信の根拠になっているのだと思います。


現役時代はアスリートとしてどうあるべきか考えることは多々ありました。結局のところやはり、目の前の1日、目の前の1モーション、目の前の1ストロークに全身全霊をかけ、最小単位を最大化させてそれを積み上げることが最も自分らしい生き方であることに気づかされました。もちろん、何かを達成するためには正しい方向を向いた計画は不可欠ですが、そのうえでこれ以上はもうできない、と思う毎日を積み重ねることが大切だと思います。これはボートのトレーニングに限ったことではなく、日常生活でも同じです。精一杯生きた毎日を積み重ねた結果、その後社会人として大成功したかはわかりませんが、少なくとも自分のこれまで歩んできた人生に愛着は感じています。



Q 大学漕艇部での一番の思い出はなんですか?

A なかなかベスト1を出すのは難しいですが、4年生の時のインカレは燃えました。その年の対校エイトが非常に調子良く、それに引きずられるように他のクルーも勢いづき、手応えを感じながら練習を積み重ねることができました。互いの頑張りが他人を勇気づける、そのような鼓舞の連鎖が起こっていたのだと思います。大会ではすべてのクルーが最終日まで残り、爽快な気分で現役最後のレースを終えることができました。

2019年。インカレ(全日本大学選手権)女子優勝の様子


勉強も、ボートも、充実した4年間。


Q 理系でありながら漕手として練習を積む生活をどうやって乗り越えましたか?

A まず、理系で運動部に所属することは決して特別なことではないと思います。漕艇部には理系の学生が毎年のように入部していますし、早稲田大学の他の運動部でも相当数の理系学生が活躍しています。高校時代に勉強と部活動を両立された方も多いと思いますが、その延長と考えて良いと思います。


とはいえ、毎日慌ただしかった記憶はあります。所属していた応用化学科は実験が多いことで有名で、週2~3回の実験がありました。そのたびに事前・事後レポートがあり、さらにそれらに不備があると容赦なく再提出を命じられ、レポート作成の毎日でした。当時は全て手書きです。時間に追われることはわかっていましたので、練習が終わった後の切替えは大事にしていました。起きている時間は練習か、入浴か、食事か、レポート作成か、その4択だった、と言うと少し大げさですが、おおよそそのような生活でした。決して楽ではありませんでしたが学科の勉強もボートも自ら好んで選んだ選択でしたし、どちらも充実していたのでしょう、苦しいと感じることはありませんでした


4年しかない大学生活を“濃く”過ごす


Q 漕艇部への入部動機は何ですか?

A 私は附属高校でボート競技をはじめました。ボートを始めたきっかけは、それまで本格的にスポーツに取り組んだことが無かったので何か新しいスポーツをと思いボートを選びました。ボートに関してはオリンピック種目にそのような競技がある、程度の知識しかありませんでしたが、一度漕ぎはじめると水の上を滑るように進む感覚が楽しくて、もっと速く漕ぎたいと思うようになりすっかりのめりこみました。

附属高校では大学漕艇部の施設を使いながら日頃練習をします。大学生とは必然的に毎日のように顔を合わせることになり、真剣にボートに向き合いながら密度の濃い毎日を送っている当時の大学諸先輩を私は羨ましくみていました。4年間しかない大学生活を自分も大学漕艇部の先輩たちのような濃い毎日を送りたい、早い段階でそう思うようになりそれが大学漕艇部への入部動機です。

“水上15センチ”の世界に魅せられる人は少なくない


Q 大学漕艇部での戦績を教えてください

A インカレ舵手なしフォア3位、ダブルスカル7位です。残念ながら早慶戦は1勝2敗と負け越しております。当時の情景は相手クルーの息づかいにいたるまで、いまだに鮮明に覚えています。何年経っても悔しいですね。


速くなりたい。ただ、それだけ。


Q 笹尾さんにとって漕艇部はどういう場所だと思いますか?

A 早稲田大学漕艇部ではボートをどれだけ速く進めるか、が普遍的な共通価値観でありその価値観に共感した人が集い互いに高め合っています。様々な社会情勢の中で世間が浮かれようと沈もうと、この価値観だけはどの時代であっても決してぶれません。速くなりたい、その純然たる想いが凝集していて、他の欲求の混在を許さない非常に透明感のある空間―ここはそのような場所だと思います。ここに来るたびに選手に宿るその想いに触れ、いつも背筋が伸びる気持ちになります。実に清々しい気分です。


「いま」を夢中で


Q 新入生や高校生にメッセージをお願いします

A 高校や大学を卒業するとき、あるいはその後の人生の節々でそれまでの生活を振り返ったとき、それが充実感に溢れるものだったと思い返すことができたらきっと心が満たされると思います。将来のご自身の夢に向かって、二度と戻ってこない「いま」を夢中になって過ごされることを祈っております

0コメント

  • 1000 / 1000